教授挨拶

現代の社会には脳に関する情報が氾濫しており、「脳のことが分かれば心のことが分かる」と信じる人が増えています。このような考え方は、「心脳一元論」と呼ばれることもあり、最先端の研究に取り組んでいる脳科学者の中にも信じている人が少なくありません。近頃の研究では、心の物質化などという話題も出てきています。それに対して、「脳と心は全くの別物である」と思っている人もいます。このような考え方は、「心脳二元論」とも呼ばれ、かつてデカルトもそのような主張をしていたことが知られています。さて、どちらの考え方が正しいのでしょうか?

私には「心脳一元論」と「心脳二元論」のいずれか一方が正しいとは思えません。脳と心について考察することは、古くから多くの哲学者によって議論がなされてきた古典的な「心身問題」の今日的な営みと言われています。私たちの研究室では、この問いにどう向き合うのかを常に意識しつつ、「海馬神経回路の構築から脳の作動原理を知る」をテーマとする様々なプロジェクトが進行中です。当然ながら、各プロジェクトの目的はそれぞれ異なっており、具体的でミニマルな目標が設定されています。しかし、それらのプロジェクトには、「脳と心を理解する」という共通の目標も隠されています。脳と心に興味を持つ若い皆さん、私たちの研究に加わってみませんか?

(神野 尚三)

略歴

  • 1994年3月 九州大学 医学部医学科 卒業
  • 1994年5月 福岡県立太宰府病院 精神科・研修医
  • 1995年5月 九州大学 医学部附属病院 精神科神経科・研修医
  • 2000年3月 九州大学 大学院医学系研究科 生理系専攻 博士課程 修了・博士 (医学)
  • 2000年4月 九州大学 大学院医学研究院 神経形態学分野・助手
  • 2004年9月 英国オックスフォード大学 MRCANU・博士研究員
  • 2006年4月 九州大学 大学院医学研究院 神経形態学分野・助手
  • 2008年4月 九州大学 大学院医学研究院 神経形態学分野・講師
  • 2010年4月 九州大学 大学院医学研究院 神経形態学分野・准教授
  • 2011年4月 九州大学 大学院医学研究院 神経解剖学分野・教授
  • 現在に至る

専門分野

神経科学、解剖学

主な所属学会

日本解剖学会、日本神経科学学会、日本精神神経学会、北米神経科学学会