研究内容

  1. 行動薬理学的手法で作出した精神・神経疾患モデルマウスの研究:うつ病、心的外傷後ストレス障害、統合失調症、がん関連認知機能障害、てんかん等のモデル動物を用いて、海馬の神経回路の機能変調の視点に基づく新たな病態の理解を目指し、集学的研究を行っています。
  2. ニューロン・グリア連関の研究:海馬のグリアがシナプスや神経回路と脳機能の制御、精神疾患の病態にどのように関わっているかを明らかにすることを目指し、研究を行っています。
  3. GABAニューロンのサブクラス分類の研究:海馬の抑制性GABAニューロンは20種類程度のサブクラスに分類されています。各サブクラスのGABAニューロンが認知や情動の制御にどのように関わっているかを明らかにすることを目指し、研究を行っています。
  4. 成体海馬神経新生の研究:海馬では発達後も新たなニューロンが産み出されています。認知や情動の制御に関わっていることが知られている成体において産み出された新生ニューロンの制御機序とその機能的意義を明らかにすることを目指し、研究を行っています。
  5. 植物由来エストロゲン類縁体の研究:更年期障害に対するホルモン補充療法があまり普及していない日本では、その代替としてイソフラボンやセサミンなどの植物由来エストロゲン類縁体に期待が高まっています。しかし、それらの有効性や安全性に関する検討は進んでいません。我々は、植物由来エストロゲン類縁体が海馬のニューロンやグリアに与える影響の基礎検討を進めています。

研究のツボ

当研究室の特徴の一つに、顕微鏡画像の解析システムを独自に開発してきた歴史が挙げられます。かつて、少し凝った画像解析をしようとすると、ImageJなどの解析ソフトを使って、自分自身でプログラムを書くことが必須でした。しかしこの方法では、プログラミングが苦手な場合、解析に余計な時間がかかり、研究が遅れてしまいます。このため本研究室では、ImageJをベースにして、簡素ながら会話型のユーザーインターフェース (UI) を備えた汎用性の高い画像解析システムを開発してきました。現在では、ラインプロファイル解析 (シナプスの正確な定量) やステレオロジー解析 (細胞の厳密なカウント)、一細胞蛍光強度解析 (一細胞における分子発現レベルの定量) などに用いる様々なマクロプログラムが8台の画像解析ワークステーションにセットアップされ、誰もが自由に使える環境が整っています。また、数値データを取り扱うことが難しいというImageJの弱点を補うため、各マクロプログラムとセットで使用するExcel VBAをベースにしたデータ処理アプリケーションも開発してきました。ビジター向けの画像解析ワークステーションも用意されており、トレーニングを受ければ、誰でも使うことが出来ます。画像解析にお困りの方がおられましたら、遠慮なくご連絡ください。